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JARL Eメール転送サービス利用規約制定に関する考え

今更ですが、標題の件について私の意見を表明したいと思います。日本アマチュア無線連盟(JARL)は、2025年6月17日、提供するEメール転送サービスのガイドラインを全面改定し新たに利用規約を制定しました。

今回の全面改正で特徴的なのは
・転送メールアドレスにメールを送信する外部利用者も「サービスの利用者」と位置づけたこと。
・会員(1名又は少人数)に対してメールを送信するためのものであることを明記したこと。
・多数の会員に対し同時または短時間に大量の電子メールを送信することを禁じたこと。
が挙げられます。

私が、Eメール転送サービスを利用して多数のJARL会員に対して呼びかけを行ったためにこのような利用規約が制定されたものと私は推測していますが、私としてはサーバー資源や回線容量は有限である以上、ルールである程度の制約をかけることはやむを得ないと考えます。

新たな利用規約の下では、多数の会員に対し同時または短時間に大量の電子メールを送信することが禁止されます。言い換えると、少数の会員に対し電子メールを送信することや多数の会員あてであっても配信を分割してかつ相当の時間的間隔をあけて電子メールを送信することは許容されることになります。これは、サーバーの負荷防止及びサービス継続性確保という観点からも合理的な規制であると考えます。

一方、この利用規約を運用するに当たっては「多数の会員」や「短時間」という定義が問題となります。多数や短時間といった表現は解釈の余地が多すぎ、禁止される行為を具体性を持って明示できていないと思われるからです。多数とは10人なのか、100人なのか。短時間とは5分なのか、1時間なのか。これは人によって異なります。

そのため、JARL会員課に対してこの点について質問したところ、担当役員から直接回答する旨の返答がありました。追って、JARLの業務執行権を持つ担当役員氏から連絡がありました。担当役員氏によると

「少人数」「短時間」は、送信されるメールの目的、内容、通数によりますので一概に申し上げられません。

とのことでした。

しかしながら、この回答については大きな問題があると考えます。「多数の会員に対し同時または短時間」のメールを送信を禁止することは、メールの内容やメールの送信目的といった「メールの内容」に着目した規制・禁止ではなくあくまでもサービス運営上の技術的な制約に基づく規制です。実際、当該担当役員氏も私とのメールのやり取りの中で

JARLのEメール転送サービスの利用ガイドラインを改定し、利用規約を定めました。(中略)事務局によれば、大量送信はサーバーにそれなりの負荷がかかるようで、サービス継続性の観点から停止等の措置を執ることがあり得ることを明確にしたものです。決して、メールの内容に着目した規制ではありません。

と述べておられました。サーバー負荷等の技術的制約に基づく禁止事項であれば、メールの送信通数や送信間隔といった「多数」や「短時間」の範囲を、JARLのメール処理能力に基づき定量的に回答できるはずです。にも関わらず送信されるメールの目的、内容、通数により「多数」や「短時間」の範囲が変わるのであれば、サーバー負荷等の技術的制約に基づく禁止事項というよりはむしろメールの内容に対する規制となってしまいます。

もし、メールの内容や目的によりJARLが規制・禁止を行うのであれば、それはEメール転送サービス利用者間の私信の内容にまでJARLが介入し表現の内容に対して統制を行うということになってしまい、適切ではないものと考えます。

メールの内容や目的により禁止事項抵触性を判断されるのであれば、それはEメール転送サービスにより転送される電子メールの内容をJARLが内容確認することが前提となります。これはプライバシーの侵害のみならず、日本国憲法で保障された通信の秘密をも侵害するもので、アマチュア無線家として看過できないものです。

Eメール転送サービス規約において、「多数の会員に対し同時または短時間のメールを送信」は禁止行為であり、万が一抵触してしまえばサービス利用を一時的又は永続的に禁止されるというペナルティを受ける可能性があります。JARLによるサービス利用禁止というペナルティは国家の刑罰権の発動とは異なる以上、厳密な意味での罪刑法定主義が適用されるものではありませんが、利用者に対してペナルティを課す以上、ある程度の明確性、予見可能性が求められるのではないかと考えます。

少なくともどの程度以上のメールを送信すればペナルティを課される可能性があるのか、利用者が事前に把握でき利用規約の禁止事項への抵触を自主的に回避できるほうが、JARL及び利用者双方からみて、望ましいのではないでしょうか。  

要するに、Eメール転送サービス利用規約には
・規約の禁止事項の内容が曖昧すぎること。これにより、ルール違反を事前に回避することが困難であること。
・規約における禁止事項の具体的な解釈は「電子メールの内容」に基づいて行われる電子メールという表現に対する内容規制であり、通信の秘密をも侵害すること。
という大きな問題があります。

当該担当役員氏は

具体的に何か考えておられることがあるのでしたら、検討致しますのでおっしゃってください。

と述べてくださるなど、当方に対する一定の配慮も見せてくださっていますが、メールを送る前にいちいち誰かにお伺いを立てねばならないというのは、非常に問題だと思います。

これらの事項を、担当役員氏に申し上げたのですが、一月近くお返事がいただけず、止むなく当方の考えとして公開するに至りました。

Eメール転送サービス利用規約を改善し、禁止事項の明確化を望みます。

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