JARL大阪府支部ハラスメント訴訟について、本日第1回口頭弁論がありましたので、そのご報告です。
第1 この裁判について
その前に、そもそもJARL大阪府支部ハラスメント訴訟とは何か、というところからご説明します。
なお、本訴訟は本年2月の第84回理事会報告にも掲載されている「JARLの役職者がJARLの業務に関して訴えられている訴訟」となります。
この裁判は、一般社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)の大阪府支部メーリングリストへの加入拒否をめぐり、原告が支部長である被告に対して慰謝料を請求している事案(昨年11月28日提訴)です。ただし、被告支部長は昨年末に死去しており、遺族が訴訟を承継して行われています。形式的にはJARLを相手取ったものではなく支部長個人を相手取った訴訟です。
整理すると、原告の主張の骨子は次のとおりです。
1原告について
原告は、JARL大阪府支部の正員であり、会員として支部メーリングリストに加入する資格があると主張しています。
このメーリングリストは、
支部からの重要な案内を受け取る
会員同士が交流する
情報交換を行う
ための、支部公式の仕組みであるとされています。
2問題となっている行為
原告は加入申請を行ったものの、
- 被告から返答がない
- メール、電話、SMS、郵送、訪問でも反応が乏しい
- 実質的に無視された
と主張しています。
さらに、
- 「物言いが気に入らない」
- 「和を乱す存在」
などの理由で加入を拒否されたと、第三者経由で聞いたとしています。
3 原告の法的主張
原告は、次のような論理で違法性を主張しています。
(1) メーリングリストは私物ではない
被告個人の私的サービスではなく、JARL大阪府支部の業務として運営されている以上、
正当な会員を合理的理由なく排除できない
支部長に自由裁量はない
と主張しています。
(2) 会員平等原則違反
原告は会費を払う正員であり、他会員と平等に扱われるべきであると主張しています。
そのため、
「気に入らない」
「和を乱す」
といった主観的理由による排除は、不合理な差別的取扱いであるとしています。
(3) ハラスメント・村八分
原告は、
情報から排除された、他会員との交流を妨害された、組織的人間関係から孤立させられた
として、支部長の行為が
いじめ、ハラスメント、村八分
に当たり、不法行為(民法709条)を構成すると主張しています。
4 請求内容
原告は、
精神的苦痛を受けた
慰謝料として10万円が相当
として、被告個人に対し、10万円及び遅延損害金の支払いを求めています。
第2 本日の口頭弁論期日について
堺簡易裁判所で本日(5月15日)の16時から行われ、原告は出廷、被告はオンライン参加でした。
訴状、答弁書、準備書面等の陳述の後、主張の整理が行われました。
1 被告の主張(ただし、原告による理解です)
被告は、原告に関して
- 原告が訴外JARLの会員多数にメール(WEB署名)を送信したこと
- JARL大阪府支部役員らにメールを複数回送信したこと
- 原告が原告と万博特別記念アマチュア無線局(8K3EXPO)との交信に係るQSLカードを公益財団法人2025年日本国際博覧会協会に送付したこと
- 訴外JARLを誹謗する動画をXに投稿したこと。
- 被告支部長宅を訪問し、その様子をXに投稿したこと。
- 万博特別記念アマチュア無線局(8K3EXPO)の電波法違反運用を、総務省に報告したこと。
- 原告が電波関係法令に違反して被告支部長を批判する無線送信を行ったこと。
などの問題行動があり、これを理由として加入を認めなかった、正当な行為だと主張しています。原告はこれに対して、これらの行為は、正当で問題ない行為であるか、事実無根であると反論している形になります。
2 裁判所の判断
本裁判は少額訴訟制度を利用して提起されていましたが、現状の主張・証拠では1回期日での審理終結が困難と裁判所は判断。職権で通常訴訟手続へ移行することを決定しました。事実関係は複雑ではなく、評価の問題であるとし、裁判所が是非を最終判断事項する事項であり、提出された証拠に基づき適切に判断する方針が示されました。
(1) 裁判官の指示
被告に対して、6月中をめどに、追加立証・主張補充を促す裁判官の指示がありました。
- 原告第一準備書面に対する詳細な反論を、メーリングリスト登録削除ガイドラインのどの条項に該当するかを明示しつつ、証拠を付して具体的に主張を補充すること。
- 「JARLを誹謗する動画を投稿した」との主張について、裏付け証拠と説明の提出。この件については、被告代理人から「JARLの総会を傍聴する際示威行為を行った件」であることが示されました。
- 「支部長を批判する無線送信」の録音データがある場合の提出。
- WEB署名メール送信に対して「会員から迷惑メールであるとの声が上がった」ことの裏付け資料の提出。
- WEB署名メール送信により「運営に支障」について、具体的にどの運営にどのような支障が生じたかを示す資料の提出。
- 「メール転送サービスに障害が発生」との事実について、システム運用関係者情報の裏付け資料の確認・提出。
- 「常務理事と原告のメールのやり取り」について、メール内容の補充提出。
原告に対しては、十分主張が出尽くしているとして、特段の指示(宿題)はありませんでした。
(2) 今後の審理
- 裁判所は長期化を避け、今回指示した主張・立証が整えば、次回で審理終結の次々回期日で判決の可能性もある旨を示唆しました。
- ただし、被告側から今後出される主張立証次第では、変更の可能性がある旨付言していました。
- 次回期日は、2026年7月8日午後3時と定められました。
4 補足と感想
裁判所は、原告の主張に一定の理解を示してくださっていると感じており、少なくとも現時点ではなんとか戦えていると感じました。
なお、傍聴人が1名いました。
以上